YAMAHA FJR1300(レビュー)

バイク
FJR1300

はじめに

 私がFJR1300に乗り始めたのは2017年7月。それ以前はKawasaki Z250に乗っていたが、山道で転倒し廃車寸前まで壊してしまった。丁度そのタイミングで、FJR1300に乗っていた先輩が手放すことになり、縁あって購入することとなった。NINJA1000などは選択肢にはあったが、FJR1300のような超大型スポーツツアラーは中古であっても一生買うことはないだろうと考えていた。しかし、中古車両との出会いはタイミング次第だと思い、思い切って購入してみた。結果的に8年間乗り続けることとなった(2006年モデル、2025年7月売却)。開始時の走行距離は覚えていないが、計2.5万km程走行した。
 すでに生産終了となっているモデルだが、中古でFJR1300の購入を検討している人の参考になれば幸いと思う。結論から言えば、非常に良いバイクだった。

良かった点

走行性能

 FJR1300は名前の通り排気量が1300ccあり、その大排気量から生まれるトルクは圧倒的だ。アップライトなポジションも相まって、アクセルを開けると上半身が後ろに持っていかれるほどの加速を体感できる。高回転型エンジンではないため、ミドルSSのような軽快な回り方はしないが、低回転から強烈なトルクがあり、タイヤが地面を蹴り出す力をはっきりと感じることができる。エンジン回転数が低いままでもバイクがどんどん前に進むため、「トルクが太い」とはこういうことかと実感できる。
 また、車重は重いが、コーナリング時にはその重さを意識せずに走行できる。セルフステアが強めで、速度を落として曲がる際には軽快に旋回できる。立ち上がりも強烈なトルクで一気に加速する。この年式は5速MTだが、高速コーナーが少ない山道であれば3速だけで十分走行可能だ。車重があるため、リアブレーキを踏んでもロックしにくく、速度調整がしやすい点も優れている。ミドルSSはリアがロックしやすいが、FJR1300は相対的にロックしにくい。

ツーリング性能(防風性能、ポジション、走行安定性)

FJR1300はツーリング性能を重視して設計されている。タンデムで10日間・3000kmを快適に走行できることを目標に開発されたというだけあり、その快適性は本物だ。

走行安定性
 車重があるため、高速道路などで横風に煽られにくい。同行したオフ車が横風で振られる中、FJR1300は安定して走行できた。ただし、どんな強風でも大丈夫というわけではないので油断は禁物だ。

防風性能
 大型の電動スクリーン、ミラー、サイドパネルが防風性に大きく寄与している。スクリーンは手元で高さ調整が可能で、高速走行時も負圧が発生しない絶妙な位置に設定できる。バイクの系譜さんにも書かれている通りスクリーンを上げすぎるとタンク上部に負圧が発生する(乗ると本当に感じる)。なので高速走行中は風除けができて、負圧が発生しない丁度良いところに設定できるスクリーンが大変ありがたい。ミラーも防風に貢献しており、冬場はハンドル周りに風が当たりにくくなる。サイドパネルも足元への風除けとして機能する(実際にはあまり使わなかったが、パネルをドライバーで外し、1段階外側に設置することができる)。

ポジション
 若干前傾になるが、アップハンドルと厚みのあるシートのおかげで長距離でも肩や腰が疲れにくい。シート高は2段階調整可能で、私は低い方を使用していた。タンクが大きく、ニーグリップもしやすい。

積載性

 FJR1300は純正オプション(古いモデルでは標準装備)でサイドパニアが装着できる。私はさらにトップケースを追加して運用していた。パニア3つで積載に困ることはほぼなかった。キャンプや長距離ツーリング時にはタンデムシートにホームセンター箱を取り付け、タンクバッグも併用していたため、もはや車並みの積載量だった。車重が重いため、荷物による挙動変化が少ない点もメリット。パニアを常設していたので、スーパーへの買い物にもFJR1300を使うことがあった。パニアの恩恵は大きい

FJR1300

タンデム性能

 2人乗りしても重心がずれる感じも無く、さらにエンジンにトルクがあるので特に苦になることはない。1人乗りの運転とあまり変わらない間隔で運転できる。ただしタンデム者の乗り降り、ストップ&ゴーの際は気を遣わないと間違いなく立ちごけするので要注意。装備としてはタンデムシートはふかふか、タンデムバーもありと2人乗りに優しいFJR。またタンデムシートが運転席に対し高くなりすぎないように設計されており、乗車時に2人の頭の位置が離れないようになっている。経験ある人もいると思うが、タンデムする際に運転者の頭よりタンデム者の頭が高い位置に来るほど恐怖を感じると思う。特にSS。その点でも優秀さを感じる。

燃費

 レギュラーガソリンで概ね18km/l。バイパスや高速で100km/hで走るなら20km/l近く伸びることも。市街地や渋滞にはまると15km/lまで下がる事があるが、車体の大きさや馬力を考えるとかなり高燃費の部類ではないだろうか。フラグシップなのにレギュラーガソリン仕様なのもうれしい所。またタンク容量が25lと大容量なので理想最大値で1回給油で500km走行できる。長距離走る身としてはかなり助かる。四国カルストや石鎚スカイライン等、途中でガソスタが無いor割高に悩まされなくて済む。給油を常に考えて走るのはかなりのストレスなので…給油キャンセル界隈。

エンジンオイルの交換しやすさ

 エンジンオイルの給油口はエンジン脇。ドレンボルトもオイルエレメントはエンジン下。カウル等何も干渉していないのでキャップやボルトを外すだけ。よく整備する箇所なので、ここの手間がかからないのは嬉しい。

取り回し

 主に低速での取り回し。セルフステアが強く、ハンドルの切れ角も大きいので見た目以上にクイックな取り回しができる。白バイ車両に使用されるだけあって、低速の取り回しはかなり良い部類ではないだろうか。少なくともYZF-R6とは比べ物にならない。(サーキット車両と比べてはいけないのかもだけど。)

出だし苦労した点

停車中の取り回し

 上記のメリットで取り上げた取り回しはあくまで低速走行中。停車中また人力で取り回すとなると重量がおおきなハードルとなる。車両重量300kgは伊達じゃない。アップハンドルや全体的なポジションが上な事が関係しているのか重心が少し上にあり、取り回す時にふらつき易い。車両をバックで出す際、想定していない小さなギャップを踏むと途端にバランスを崩す。
 また一時停止する際も注意してほしい。左右確認しながら停まる、次曲がるからハンドル切りながら停まる、等停まる動作に何かを足してはいけない。まず確実に停車してから左右確認、発進する時にハンドル切る。当たり前だけど、他の車両以上に当たり前の操作を当たり前かつ丁寧に操作しないと立ちごけする事になる。(経験者)

大きさ

 単純に置き場所に困る。元々車幅があり更にサイドパニアを装着しているので普通の車両の1.5倍は場所をとる。うちはガレージが無かったけど通り道を塞ぐ事になった。ガレージの場合は余裕を持って250cc車両の倍はスペースを確保したいところではある。(ガレージ持ってないので肌感)

まとめ

 FJR1300は大型スポーツツアラーというジャンルの特性上、想像されるメリット・デメリットは確かに存在する。しかし、デメリットは想定内に収まり、メリットは想像以上だった。車体の大きさに反して峠道も走れるクイックさ、十分すぎる積載性、実は高燃費、そして太い排気音。圧倒的な所有感も満たしてくれる良いバイクだと思う。
 最後に、立ちごけを心配している方へ。街中のFJR1300を見てみると、大体どの車両も立ちごけの痕跡がある。そういうバイクだと割り切って付き合うのが良いだろう。
 FJR1300の購入を検討している方、躊躇している方の参考になればと思う。

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